これからの日本は空き家となる物件がさらに増加します。
人口減少によって空き家が増加していくことは避けられないとしても、問題となるのはその空き家を修繕や解体、管理もせずに放置されてしまっていることです。
空き家が放置される原因としては、相続された家が売りたくても売れず、賃貸として貸し出そうにも借り手がつかないため、結果として相続放棄などで放置されてしまうことが主な原因です。
そして空き家となった物件を放置しすぎると問題なのが、周辺環境の悪化や、倒壊による周辺住民への被害にまで繋がってしまう危険性があることです。
これが今の日本が抱えている空き家に対する大きな社会問題です。
国土交通省はこれからも増えてくるであろう空き家を減らすために「空家対策特別措置法」を改正する方針を固めました。
今コラムではそうした法改正によって今後の日本の空き家事情はどうなっていくのか?について解説していきます。
「空き家が増えてしまう原因」
先でも説明したように相続された家が売りたくても売れず、賃貸としても貸し出すことができずに結果として放置されてしまうことも原因の一つではあります。
しかし、空き家が放置されてしまっている最も大きな原因となっているのは、今回の法改正で厳しくなるであろう「固定資産税の優遇措置」です。
2023年1月時点の国土交通省が出している法律には「住宅用地であれば固定資産税を6分の1に減額する」という固定資産税の軽減措置が存在しており、住宅用地であれば税金の支払いが少なく済むのです。
住宅用地とは「居住のための建物が存在し、居住の目的を果たすために使用されている土地」を指します。
つまり土地の上に居住用の建物が存在していれば軽減措置が受けられるということです。
仮に空き家を解体して更地にしてしまった場合には、固定資産税の軽減措置が受けられなくなってしまうため、この法律も空き家が放置されてしまう原因の一つといえます。
「解体には数十万円のお金が必要だし、軽減措置を受けられるなら空き家として置いていた方が得かも」となってしまうのです。
さすがに今の法律のままでは空き家が減っていくことはないでしょう。
では空き家を減らしていくために、今回改正される法案ではどのような内容になっているのでしょうか?
次項では法の改正点についてみていきましょう。
「改正で変わる点」
現在、日本全国には修繕や解体、管理されずに放置されている空き家は300万戸以上あると言われています。
今後さらに人口減少によって空き家数は増加が見込まれており、国土交通省の資料によると2030年には約470万戸にまで達すると予測されています。
こうした空き家を少なくするために法改正では以下の点が変更されます。
左が既存の法律、右が改正後の法律となっています。
表だけを見るとほとんど変わっていないようにも思えますが、空き家と判断される「基準」に違いがあります。
基準は今後の方針で定めるとなっていますが、雑草が繁茂していたり、窓が割れているなどでも行政が指導・勧告することで税の優遇措置を解除できるようになります。
今までの内容+αという形で、これにより所有者にはより早い段階から対策を促すことができます。
より早い段階で対策することにより周辺環境の悪化や、倒壊による周辺住民への被害にまで繋がってしまうような危険性は少なくなるかもしれません。
国土交通省は2030年までに空き家となるであろう470万戸の予測を、400万戸程度にまで抑えることを目標としています。
「まとめ」
この法改正によって激的に空き家が少なくなるといったことは考えにくいかもしれませんが、これから進めていく空き家対策の第一歩目としては有効ではないでしょうか。
しかし所有者に対して解体などの決断を迫る方法としては申し分ない反面、解体した後の有効活用について何も考えられていない点には疑問が残ります。
これまでも国は新築住宅に対する支援はたくさんしてきましたが、老朽化した後の物件に対してはなにも支援をしていません。
所有者に対して解体を促すだけではなく、解体した後のことについてもっと議論し、強化すべきだと考えます。
解体費用として国が助成金を出してくれるなどがあれば、空き家問題も少しは解消されるようになるかもしれません。
空き家が1軒あるだけで都市計画道路の建設がストップしてしまうこともあるため、できるだけ早く効率的な施策を求めます。
今後、日本が空き家問題に対してどのような施策が打たれていくのかに期待しています。