「米FRB利上げの影響」
米FRBとは、米連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)の略称です。
これは米国の中央銀行にあたり、日本で例えると日本銀行になります。
近年、新型コロナの影響やロシアのウクライナ侵攻による供給不安から世界中でインフレが加速しています。
これはアメリカ経済でみても同じくインフレが加速しており、さらには高いインフレが続くことは国にとって様々なリスクをもたらす要因となります。
こうしたリスクを回避するために米FRBは物価上昇圧力を緩和しインフレを抑え込むため利上げを行いました。
2022年5月4日の委員会では、およそ22年ぶりに0.5%の大幅利上げが決定したのです。
そもそも利上げするとはどういったことなのでしょうか?
まず、「利上げする」ということは「金利が上がる」ことを意味します。
金利が上昇すると、各企業や個人はそれだけ高い金利で資金を調達しなければならないため経済活動の低下に繋がります。
例えば、個人で住宅ローンを組もうと考えている時に、金利が上がってから購入しようと考える人はいないはずです。
上記のような理由から、米FRBは金利を上げることによって個人消費や各企業からの投資を控えさせ、経済活動を抑制する事でインフレの低下を狙っているのです。
では、米FRBの利上げは日本にどんな影響を与えるのでしょうか?
みなさんもご存知のとおり今は円安状態が続いており、6月10日時点でいうと1ドル134円を突破しました。
この円安ドル高に拍車をかけているのが、米FRBの利上げです。
みなさんは「金利1%の金融商品」と「金利5%の金融商品」を比べてみると、どちらが魅力的に思いますか?
私がもし投資家の立場にいるのなら間違いなく金利が高い方に投資しますし、それと同じく、世界中の投資家たちも金利が高い方へ投資するでしょう。
米FRBが利上げをしたということは、ドルを買う人がさらに増えるということです。
そのため今後もさらに円安ドル高の動きが予想されますので、日本円の価値がどんどん下がっていき、物価も上昇していくことになるでしょう。
日本の住宅ローンや事業用ローンなどの金利に対しては多少の影響はあるかもしれませんが、日本では金融緩和が継続されているため今のところ問題ないと思われます。
「日本の貿易赤字との関連性」
日本の貿易が赤字となった原因は原油、液化天然ガス(LNG)の価格高騰によるものです。
2020年末から徐々に高騰し、2021年度の鉱物性燃料の輸入額は前年度に比べて、実に約90%も増加しています。
これはコロナ対策による規制の緩和や、コロナワクチンの普及により経済が回復した影響であり、2021年夏以降において各国のエネルギー需要が高まっている中、供給が追いついていないのが原因です。
さらに2022年度においては、ロシアによるウクライナ侵攻も相まって資源価格は一段と高くなりました。
こうした状況下から2022年度は輸入額がさらに増加し、貿易赤字を拡大させることは避けられないでしょう。
4月26日に岸田総理が原子力を再稼働させる可能性について言及したのも、こうした事態を踏まえての発言だと考えています。
原子力発電所を1基動かせば、世界のLNG市場の年間100万トンを新たに供給する効果があるため、日本政府としては再稼働させたいと思っているのです。
再稼働させるのは至難の技ですが、しっかりと安全性に配慮しつつ国民の理解を得ることが必要となります。
他の方法で再建していくには、市場動向に合わせた経済運営を行うことが重要になります。
一般的に社会が豊かになると国内消費が増えますが、そうなれば需要過多になりやすく、経済は消費で回るようになります。
今までの日本は貧しく、国内消費が弱かったことから輸出をメインに経済成長を遂げてきましたが、その段階は既に終了しています。
アメリカは世界からあらゆる物を買い入れる豊かな消費国のトップといっても過言ではない存在ですが、日本も徐々にそうした国へと変わりつつあるのです。
「今後、金利は上昇する?」
コロナの影響により世界中の経済が混乱している中においても、インフレによる過度な物価上昇が起こると政策金利を上げるのが一般的な考えです。
日本でも日本銀行が政策金利を上げると明言すれば、住宅ローンなどを組んでいる人にとっては金利も必然と上がる傾向にありますので、月々の返済額が増加することで苦しい生活を余儀なくされます。
現在において住宅ローンを変動金利で返済してる方は、特に注意が必要です。
変動金利は半年に一度金利の見直しがありますので、今後、大幅な金利上昇があれば5年間は毎月の返済が変わらないので利息が返済額を上回る事もあり得ます。
「今は変動金利の方が金利は安いから」と安易に考えるのではなく、金利が上昇した時のリスクも踏まえた上で、一度考えてみましょう。
これまでは世界全体がコロナの影響で低水準の金利を維持してきましたが、今後はそれぞれの国で政策金利への対応が異なるでしょう。
今すぐとは言いませんが、近い将来において金利が上がる可能性は十分に考えられると思っておきましょう。
「スタグフレーションを見据えて」
スタグフレーションとは、経済が停滞しているにも関わらず、物の価値が上昇していく現象を意味しています。
では、どのような時にスタグフレーションは起きるのでしょうか?
本来であれば、不景気において国民の消費を底上げすることは難しく、企業側も無理に販売価格を上げることはしません。
しかし、近年においてはコロナやウクライナ情勢などによる経済的影響を日本は受けており、エネルギー資源や原材料の仕入れ価格が上昇していることから必然的に物価を上げざるを得ない状況に陥っています。
このように経済が停滞しているにも関わらず、物価の上昇を余儀なくされる状態においてスタグフレーションは起きてしまうのです。
そんなスタグフレーション下においても有効な投資先が不動産です。
まず不動産というのは「衣・食・住」の「住」の部分を需要としており、生活する上において必要不可欠です。
スタグフレーションになったからといって、家賃が急激に下がることは考えにくく、立地の良い不動産であれば価値は下がらないでしょう。
円安が進んでいる影響で円の価値は徐々に下がっている一方ですし、預貯金を貯めていても利息も少なくほとんど意味がありません。
今後はスタグフレーションを見据えた上で、資産運用していくことをお勧めします。
「まとめ」
国内での需要が高まる中、エネルギー資源や原材料の供給が減っているため仕入れ価格は上昇の一途を辿っています。
また、資源(モノ)の価値が上昇している理由として、実質実効為替レートがあり、諸外国に対して相対的に通過安、物価安が起きています。
これは1995年と比較して約50%さがっており、日本の通貨の力と生産力が相対的に低下しているのと、今回のウクライナ危機を発端に、世界全体が市場(自由な取引)優位から資源(モノ)優位に移行しているのが大きな要因と思われます。
コロナ禍で世界的に経済混乱が起きている中で、モノの価値が上昇すれば、政策金利として変動金利も上昇する傾向があります。
先でも説明しましたが、住宅ローンを変動金利で返済している方にはダメージは大きいでしょう。
金利が上昇すれば見直しまでに5年はかかります。
ただ、円の価値が下がっているということは、物の価値は上がることを意味します。
預貯金だけでなく、不動産等の資産に投資をする事で安定的に資産の保有ができますので、今後の対策の一つとして検討してみてはいかがでしょうか?